晩夏の過ごし方

晩夏の過ごし方

プロローグじゃい!

「SRT特殊学園は、政治的中立を標榜としたキヴォトスにおける最高レベルの武力機関だった。だが連邦生徒会長の失踪、並びにシャーレの活動開始に伴いその責任の所在と意義はは不明瞭になり、やがて厄介者として解体された」

ソファーに座る私の視線の先にいる女性は、窓を見ながら私にそう語りかける。

「だが、その先生はもう存在しない。あるいはその権限はイロハに移った。そして今、私は事実上連邦生徒会長のようなものだ。キキッ。このキヴォトスの覇者なのだからな」

彼女はくるりと振り向くと、私の目にその視線を向ける。

羽沼マコト。

ゲヘナ学園をあの窮状から脱却させ、見事戦争を勝利に導いた指導者の姿がそこにあった。

マコト「素敵なことだろう?君が望む、SRTが機能する条件は整った」

彼女はそういうと机にあるファイルを手に取り、私に歩み寄る。ヒールの音が規則正しく響く。

ユキノ「それは、つまり・・・」

ファイルが私の目の前に差し出される。

マコト「最初に言っただろう。私は約束は守る人間だと」

ファイルのタイトルは、SRT特殊学園再建計画書だった。

──────────────────────────

♪〜♪〜♪〜

ユキノ「・・・んっ」

ソファの上に寝ていた私は、その音で目を覚ます。

時刻は4時30分。定刻。日の出はまだだ。

体をあげて、まだすやすやと雑魚寝をしている4人を見る。

どんな夢を見ているのだろうか。

とにかく、行かなければ。

私は彼女達を起こさないように端を通りつつ教室を出る。

昨夜にコンビニで買ったゼリー飲料を咥えながら走り込みを始める。

・・・・・

戦争終結からおよそ5ヶ月が経過した。

あの戦争はまさにヒーロー的な?逆転で、ゲヘナ・・・及び対アビドス大同盟の勝利に終わった。この戦いでシャーレ、後にゲヘナに従軍した私たちはバルジの戦いやイブキ救出作戦などでの活躍の功績が認められ、恩赦と共に念願のSRT再建が叶えられた。

『次のニュースです。空崎ヒナ元風紀委員長の葬儀から3ヶ月が経過した昨日、万魔殿は党大会を開催しました。この中で羽沼議長は・・・』

一旦イヤホンを外し、立ち止まる。

そしてゼリー飲料のゴミをゴミ箱に投げ捨てた。

ゴミ箱。

・・・いや。考えない考えない。

私はイヤホンをつけて再び走り出す。

『昨日夜、ゲヘナのアラバ海岸にてアビドス・アリウス首脳会談が行われました。会談後の共同声明で両会長は『この物資援助が双方の発展につながると強く期待している』と・・・』

今日は政治の世界の話題が多い。

・・・私もSRTの生徒会長・・・すなわち為政者だ。

だが、このようなことをしたことはない。

現在SRTは、ゲヘナの強い影響下に置かれている。同じようにゲヘナから支援を受けているアビドスやアリウスとは違って外交などの自由はなく、形骸化した連邦生徒会の評議会でも基本的にゲヘナに同調するだけ。あの頃と変わった点といえば、マコト議長の気まぐれ・・・あるいは私たちへの配慮か、かつてのように道具として扱われることはなくなり、人間らしく青春を楽しみたまえと言われた通り野球大会に参加したり、観光に出かけたりできるようになった。

だが私たちがいま守っている『正義』は果たして本来のSRTの理念に則った正義なのだろうか。

かつてカヤのクーデターに参加した時に対峙した後輩達が言っていたことと、今の自分達の振る舞いは矛盾しているのではないか。

そんなことを考えながら走り続けていると、いつの間にか校舎まで戻ってきてしまった。

朝5時半。もう日も出ている。

校門に背の低い少女が寄りかかっている。

クルミ「おはよう。また走り込み?」

ユキノ「そうだ。・・・戦いに備えた訓練としても、次の試合に向けた基礎練としても走り込みは役に立つ。クルミもやったらどうだ?」

クルミ「遠慮しとくわ。もう朝4時半に起きるなんてごめんだもの」

やれやれと首を振るクルミ。

平和な時代になって私たちがだらけたわけではないが、ちょっと弛んでいるような気もする。

・・・まあ、戦い以外にもやることができて、スケジュールも大きく変わったから仕方ない。

ユキノ「・・・次はビラ配りだったな。クルミ、ビラを・・・」

クルミ「まず朝ごはんでしょーが」

ツッコミが如く叩かれる。

・・・真面目に話しているつもりなのに、いつの間にかボケ担当のような扱いを受けている。ひどい。

クルミ「みんな起きてるし、ニコももう作ってんだから!行くわよ!!」

手首を引っ張られるままに、私は校舎に入っていった。

食堂。

ゲヘナの業者に作ってもらった校舎の中にあるここは、今後の入学者を想定してしっかり作ってもらった。

ニコ「あ、おはよう。今日の朝ごはんはおいなりさんだよ」

オトギ「毎朝走り込み。精が出てるね・・・」

私なんて1番起きるのが遅くなっちゃったよ・・・とぼやくオトギ。

ユキノ「・・・おはよう。ニコ、オトギ」

2人を交互に見て挨拶をし、そして2人の間に座っている少女を見やる。その目に光は・・・

ユキノ「おはよう。ミヤコ」

──────────────────────────

用語集

イロハと継承:先生の定義は様々。機械によってはシッテムの箱=先生と認識している。アロプラと会話できないとはいえ最低限の操作ができるイロハはある意味二代目先生だろう。

SRTの再建:アビドス廃校戦争での活躍が評価され、またSRTが活躍できる条件も整ったことでユキノたちは念願のSRT再建を果たすことができた。とはいえSRT自治区に外交権はなく、内政も毎日派遣されてくるチアキが代わりにやってくれるので、ユキノたちは好きなことをしつつ、再び訪れる戦いに備えて毎日訓練をしているだけでいい。現在のSRTの活動内容は野球、勧誘、廃墟の探索など。

チアキの派遣の理由は(書類作業ができなさそうな)FOX小隊の補助兼お目付役。シロコの方に派遣していないのはマコトの采配ミス。

雑魚寝:ミヤコを挟むようにニコとオトギが、オトギの隣にクルミが寝ている。ユキノは少し離れたところで寝ているが、これは早起き故他を起こしたくないため。決して嫌がられているとかではない!!!

ミヤコ:RABBIT小隊の元小隊長。現在は失語症になり、FOX小隊に支えられる日々を送る。失語症になってしまった理由として

1.イブキ救出作戦時にFOX小隊を追跡中、敵艦砲が直撃して『大怪我』を負ったサキを目の前で見てしまった

2.ミサイルのショック

3.ゲヘナでの聴取で全てを明かされたショック

4.ぴょんこのタヒ(誰が殺したんですかねぇ)

などがある。ミヤコは本来なら正常なくせにアビドスに加担しようとしたドブカス扱いだが、うまいこと工作を進め、大切にしていたペットを中毒者に殺された被害者として扱われセーフになった。

代わりのウサギをペットショップで買おうとしたユキノはクルミに百連パンチをお見舞いされた。

おまけ 後々使う可能性がある強さの表を開示

暁のホルス≧ゲヘナ艦隊>>>>>>>>>イロハ戦車旅団>>>ホシノ様=200%ヒナ= 迷いを捨てたナグサ>おじさん> リオ専用アバンギャルド君=ヒナ≧ネル=ミカ>ツルギ=イロハ連隊>FOX小隊> 覇者マコト=RABBIT小隊>蛇女ハナコ>>>RABBIT小隊(汚染)=ナグサ>>マコト>>>迷いしかないナグサ>>>身共ちゃん

SS一覧へ

Report Page